きみと秘密を作る夜
互いに驚きのまま、静止した。



何でいるの?

で、よりにもよって、隣人?


もうわけがわからない。



「小泉 里菜子ちゃんだって。お隣に引っ越してきたの。ハルと同い年よ」

「同い年?」


やっぱり反応したのは母だった。



「桜木 晴人です。うちの子もリナちゃんと同じ、中学2年生なんです」

「まぁ、よかったじゃない、リナ。ご近所で同級生のお宅がなかったから諦めてたけど、お隣にいたなんて。わからないことはすぐに聞けるし、安心ね」


いやいや、こいつとだけは友達になりたくないんだけど。

とは、言えるわけもなく、曖昧にしか笑えない私。



「ハルくん? うちの子が迷惑掛けちゃうと思うけど、よろしくね?」

「ほら、ハル。あんたもちゃんと挨拶しさない」


母ふたりに促されて、『ハルくん』は嫌そうな顔で、しぶしぶ「どうも」とだけ返してきた。


態度悪いなぁ。

まぁ、さっきの今で、にこやかにできないのは、お互いさまだろうけど。



それでも、ご近所さんに対して、第一印象は大事だ。

私はあからさまに『ハルくん』の母にだけ向け、笑顔を作った。



「こちらこそ、わからないことばかりですが、よろしくお願いします」


ぺこりと頭を下げて見せると、『ハルくん』の母は、「やっぱり女の子はしっかりしてるわねぇ」と、私を褒めちぎっていた。

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