きみと秘密を作る夜
祖母の部屋は、私の部屋の真下にある。

そりゃあ、窓越しの会話なんか、聞かれていたとしても不思議じゃない。


祖母は悲痛な顔をした。



「引っ越してきた頃はつまらなそうな顔ばかりしていたリナちゃんがよく笑うようになったのは、ハルくんのおかげだと思った。だから、ふたりの秘密を守ってやりたかった。なのに、こんなことになるなんて」


そう言って祖母は、涙をこぼした。

私は戸惑うことしかできない。



「泣かないでよ、おばあちゃん。何でおばあちゃんが泣くのよ」

「ごめんね。ごめんねぇ、リナちゃん」


小さくなる祖母の背中をさすろうと思ったのに、左手はギプスが邪魔してしまう。

私は途方に暮れてしまった。



「ねぇ、おばあちゃん。私、晴人に嫌われちゃったみたいなんだ。どうすればいいかなぁ」


なのに、祖母は何も言ってくれなかった。



晴人がいてくれたからこの町を好きになろうと思ったし、晴人と一緒だから高校も選んだ。

だけど、晴人がいなくなってしまったら、急に目の前が真っ暗になったみたいに、進むべき道を見失う。


私は、どうするべきなのか。

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