きみと秘密を作る夜
好き。



あぁ、そうか。

私はずっと、晴人のことが好きだったんだ。


やっと自分の中にあった感情の名前を知って、でもそれと同時に失恋だ。



「わかった」


今度は簡単に声が出た。



「私もう、二度と晴人に声かけない。晴人を困らせたりしない」


晴人は私じゃない人を好きになった。

だったらもう、私が何を言っても無駄だと思った。


醜く泣き喚いたところで、晴人が私を選ばないことはわかっていたから。



「晴人はさ、幸せになってね。ばいばい」


言うが先か、逃げるようにきびすを返す。



校舎まで戻ってきたところで、こらえていたはずの涙が溢れた。


私には晴人しかいなかったのに、なのに晴人は私じゃなくてもよかったんだ。

その事実が、痛くて悲しい。



「晴人……」


拭っても、拭っても、涙は止め処なく溢れてくる。

晴人がいなきゃ、私は笑い方すらわからない。


埋めて、隠してしまえば、この感情はいつか消えてなくなってくれるだろうか。

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