嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する
触れたくて、触れたくて
花帆と杏太がふたりで出かけたあたりからずっと気が立っていた。それに加えて阿久津くんと駅前のカフェに行ったと聞かされて腹が立った。
仮にも花帆は俺の婚約者だろう。なにをのうのうと男と出歩いているんだ?
それとも阿久津くんが強引に花帆を誘いだしたのか?
身近な先輩で断りづらかったのかもしれない。
いろいろ理由を考えてはみたが、やっぱり花帆が俺以外の男とふたりで遊ぶのは許しがたい。
でもなぁ。
さすがにあれは後悔している。カッコ悪すぎてもう思い出したくない。
子供みたいに嫉妬して独占欲丸出しの態度を取ってしまった。
上の空で夕食を済ませ、いつも通り先に風呂に入らせてもらう。
いつか花帆と一緒に入りたいと思っているけれど実現できるのだろうか。
あんな場面に出くわすくらいなら、もっと遅くまで作業をしていればよかった。いや、知らなくて後から事実を聞かされた方が堪えるか。
ああでもないこうでもないと悶々としていたら、花帆の風呂が終わっていた。花帆はわりと長風呂なので、そんなにも長い時間思い悩んでいたのかと、余計に憂鬱な気分になる。
まだ気持ちが昂ぶっているし、これ以上へまはできない。会話もそこそこに寝室へと移動した。
しずしずとついてきた花帆の態度が気になってしかたない。
荒々しくしたキスをどう感じただろうか。もしかして嫌悪感を抱かせてしまっていたら。
そこまで考えて頭を振る。