嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する
「どうして俺が母さんの後なんだ」

「だって、早く連絡しないと夕食の準備に取りかかっちゃうでしょ?」

 まるで言い聞かせるような口調。

 なんだか俺を子供扱いしていないか?

 花帆はおかしそうにクスクスと声を転がして、布団を口元に手繰り寄せた。

 俺は無言のまま手を伸ばして花帆の後頭部を掴んだ。

 驚いている表情をあまり確認しないままキスをする。温かくて柔らかく、ずっと吸いついていたくなる唇だ。

 甘噛みすると華奢な肩が小さく跳ねた。それがまた心を揺さぶって離れられなくなる。

 口内に侵入して逃げ惑う舌を絡め取る。俺の服をギュッと握り締める手の力が強くなった。

 腰のラインをなぞり、やわらかな太ももまでやってくる。そこから来た道を戻ってお腹の辺りまで這わせた手を服の下にもぐらせ、これ以上にないくらいゆっくりとした動作で胸まで辿り着いた。

 ひたりと合わせたままの花帆の唇から声にならない声が漏れる。

 好きだ。どうしようもなく。

 昂る感情を抑えきれず、欲望のまま下着の上から胸を持ち上げるように揉んだ。

「あっ」と声を漏らした花帆の息遣いが荒くなる。

 円を描くように動かすと胸の形が布越しでも感じられた。

 花帆には経験がない。だからこそ怖がらせないように、焦らず慣らしていきたいのに。

 手が勝手にブラジャーのホックを外そうとしている。
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