嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する
「花帆が逃げた原因は?」
「俺の生い立ちについて父さんたちと話していたんだけど」
杏太は「ふーん?」といつもと変わらない顔で相槌を打つ。
杏太が十六歳になった折に真実を明かした時はさすがに困惑していたけれど、それ以降、俺とのかかわり方で取り乱している姿は見ていない。
「俺が花帆と結婚する自信がないっていうのを聞かれた、と思う」
「自信なかったの?」
杏太が目を丸くする。
「ない」
宣言すると、杏太はケラケラと愉快そうに笑う。
「笑いごとじゃない」
「あー、今の仁、花帆に見せてあげたいわ」
目尻に涙まで浮かべる顔をじろっと睨みつける。
「おそらく俺が結婚したくないと言っているふうに聞き間違えて、逃げた」
「うわ~マジか。花帆も自分に自信がないからなぁ」
俺よりも花帆を知った気でいるような発言だな。いや、ここで嫉妬して苛ついている場合じゃない。
「それで? 花帆が行きそうな場所の目処はついてるの?」
「それが……」
心配そうな顔をした両親がこちらに向かってくるのを視界の隅に捉えながら、情けなく返答に窮した。
「俺の生い立ちについて父さんたちと話していたんだけど」
杏太は「ふーん?」といつもと変わらない顔で相槌を打つ。
杏太が十六歳になった折に真実を明かした時はさすがに困惑していたけれど、それ以降、俺とのかかわり方で取り乱している姿は見ていない。
「俺が花帆と結婚する自信がないっていうのを聞かれた、と思う」
「自信なかったの?」
杏太が目を丸くする。
「ない」
宣言すると、杏太はケラケラと愉快そうに笑う。
「笑いごとじゃない」
「あー、今の仁、花帆に見せてあげたいわ」
目尻に涙まで浮かべる顔をじろっと睨みつける。
「おそらく俺が結婚したくないと言っているふうに聞き間違えて、逃げた」
「うわ~マジか。花帆も自分に自信がないからなぁ」
俺よりも花帆を知った気でいるような発言だな。いや、ここで嫉妬して苛ついている場合じゃない。
「それで? 花帆が行きそうな場所の目処はついてるの?」
「それが……」
心配そうな顔をした両親がこちらに向かってくるのを視界の隅に捉えながら、情けなく返答に窮した。