嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する
「部屋以外にもプールとかエステとかいろいろあるし、とにかく最高だから楽しんでいってね。仁も何度か利用しているけど、満足してもらえていると思うよ」

 何度か利用、という部分が引っかかる。

「そんなに心配しなくても仲間内の、男同士でだから大丈夫だよ。可愛いなぁ。捨てられた子猫ちゃんみたい」

 顔に出ていたのか、長谷川さんがニッと笑って補足した。心を読まれて恥ずかしくなる。

「ありがとうございます……」

 長谷川さんの正体を知って、気圧されて声が尻すぼみになる。

「まあ、楽しめるかどうかは仁の頑張り次第か」

 口角を上げてニヤリと笑った長谷川さんを、仁くんが目を細めて睨みつける。

 仲がいいというか、犬猿の仲みたいな感じなのかな。

「おまえは本当に口から生まれたような男だな」

「仁はもうちょっと愛想よくなった方がいいよ。俺みたいに」

「遠慮しておく」

 言い合いながらも楽しそうだ。

 仁くんって友達の前ではよく喋るんだなぁ。

 初めて目にした姿にほっこりした気分になる。

 それにしても、なんて華やかな友人関係なのだろう。
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