嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する
「悪い。まさか遼平が顔を出すとは思わなくて」

「初めて仁くんのお友達に会えたしうれしかったよ。それにしてもホテルの御曹司だなんてすごいね。しかもあんなにイケメンで」

「花帆はああいうのがタイプなのか」

 私のドストライクは仁くんだ。

 誤解はされたくないけれど、面と向かって宣言するのはさすがに恥ずかしい。

「女の子ならみんな好きそうな顔だよね。人あたりもよくて口もうまそうだしね」

 溶け始めたアイスを急いで口に運びながら説明をする。

「あっ、さっきの名刺に営業部って書いてあった。やっぱりお話が上手なだけあるね」

「花帆はよく喋る男の方がいいのか」

 どこか感情を抑えた低い声に慌てて否定をする。

「私は静かで落ち着いている人がいいかな」

 仁くんみたいに。

 アイスを食べているのに顔が熱い。

「俺に気を使っているんじゃないのか?」

「本心を言っているだけだよ」

 私を真正面から見据える綺麗な瞳とかち合う。

 無理。カッコよすぎ。

 両手で目もとを覆って悶絶した。

 誰もが羨む容姿で仕事もできて、頼りがいがあって優しくて、こんなに素敵な男性が私の気持ちを推し量ろうとするなんて、なんて贅沢なの。

 長谷川さんありがとうございます。最高のスパイスになりました。
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