嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する

 恥ずかしくてとてもじゃないけれど目も見て話せない。ドッドッと高鳴る自信の心臓の音に緊張感を煽られる。

 厚くて逞しい胸が大きく上下した。

 仁くんも緊張しているのかな……。

 そう考えた時。

「きゃっ!」

 突然身体を持ち上げられて、視点が定まらないなかどこかに運ばれる。優しくベッドの上に転がされたかと思えば、次の瞬間には組み敷かれて噛みつかれた。

 むさぼるような口づけに息をするのもままならない。

「ん、はっ……」

 意識がどこかに飛びそうで怖くなる。なにかを握り締めたくて手を彷徨わせると、今度はその手を捕まえた仁くんが指を一本一本丁寧に舐めた。

 ぞくぞくと背中に快感が走り抜ける。

「仁くん、怖い」

 もう無理だった。

 涙ながらに恐怖心を吐露する。

「俺が?」

 顔をぶんぶんと横に振る。

「違う。これからする行為が、怖い」

 仁くんはピタリと動きを止めて私の瞳を覗き込んだ。

「俺も怖い。花帆に嫌われないか、いつだって不安だ」

「うそ」

「こんなに好きなんだ。花帆が嫌ならいつまでも待つよ。無理やりはしたくない」

 安心させるように表情をやわらかくして、私のまぶたの辺りに触れるか触れないかのキスを落とした。

 胸がきゅうっと締めつけられる。

 ああっもうっ。大好き。
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