嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する

 手作りのピザや見た目がお洒落な創作料理をたくさんいただいて、お腹いっぱいになったところに豆からひいたコーヒーをご馳走になった。

 ここはカフェですか?と問いたくなるほどすべての完成度が高く、隠居生活がとても充実しているのが伝わった。

 一足先に弥生さんに贈った錦玉羹には菜の花を浮かべたそうで、沙倉さんとそれぞれの花が持つ意味について話しをしているらしく、キャッキャッと楽しそうな笑い声が響いている。

 菜の花の花言葉は“快活”と“明るさ”なので、まさに弥生さんのイメージにピッタリだ。

 和菓子に花のモチーフが多く使用されることから、専門学生の頃に独学で花言葉を学んだのだが、今日ほど知っていてよかったと思った日はない。

 薪割りに興味を持った杏ちゃんはおじいさまとおばあさまと外に出て行った。

 私は上で休憩してきたらどうかと提案され、お言葉に甘えて仁くんとふたり二階のセカンドリビングで一息入れる。

 ネイティブ柄の上に白色長方形のテーブル、同じく白色の二人掛けソファ、そしてハンモックが置かれている。

「すごい。ハンモックがある」

「寝転がってみたら?」

「今日はやめておく。スカートだし、はだけそうだから」

「そうか。じゃあまた今度だな」

 また一緒にこの家を訪れる日があるのだと思ったら、すごくうれしくなった。
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