嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する
正面に立つ仁くんをちらりと盗み見ると、すべてを包み込むような温かな眼差しとぶつかる。
反射的に笑みがこぼれた。
不意に仁くんの口元が動いたので、なんだろうと目で追う。
あ、い、し……。
心臓が大きく脈打った。
愛している?
頭がぐわんっと揺れて、正気を保つために慌てて目を逸らす。
見間違いかもしれないけれど、たぶんそう。
こんな時にそんな台詞を口パクで言えるなんて、肝が据わりすぎていてびっくりする。
式が終わったら私も伝えたいな。
私の小さい頃からの夢は、和菓子職人になることと、仁くんのお嫁さんになることだったんだよって。
これからも夢に向かって走り続ける。叶うならば、仁くんとずっと一緒に。
END