嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する


 のんびりと過ごしていたら、離れに戻った頃には二十一時を回っていた。

「仁くん先に入ってね」

 花帆はいつも俺の後に入りたがる。自分が入った後の風呂に俺が浸かるのが嫌らしい。

「昔は一緒に入っていたくらいなのに、なにを言ってるんだ」

「もうっ。そういうのも恥ずかしいの!」

 子供のように拗ねる花帆も愛らしいなと密かに思いながら要望を受け入れて先に入る。

 入れ替わりで花帆が風呂に入り、寝る前の身支度を整えたらようやくふたりきりの時間だ。

 ゆっくりしたいところだが、俺たちの仕事は朝の七時から。なるべく早く休ませてあげたい。

「とりあえず寝室に行くか」

 何度も欠伸をしている姿を横目に立ち上がる。花帆はしずしずとついてきた。

 寝室にはクイーンベッドとサイドテーブルしか置いていない。元はダブルベッドを使用していたのだが花帆が来る前に買い替えた。

 あえてキングサイズにしなかったのは、ベッドの幅が広くなると密着度がなくなるから。
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