嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する
 うちの仕事は体力勝負だ。女性の華奢な身体には大きな負担がかかっているはず。

 毎日頑張っているからな。

 やましい気持ちは頭の隅に追いやって、日々酷使している目の前の身体を労わった。

「これくらいにしておくか」

「ありがとう。気持ちよかった」

 花帆に指示された場所はくびれのラインからお尻にかけて。そこに湿布を貼るとなると、ズボンと下着を下にずらさないといけない。

「……ズボン下げるぞ」

「うん」と蚊の鳴くような声で答えた花帆から緊張感が伝わってきて、思わずごくりと喉を鳴らす。

 本当にいいんだよな?

 ドギマギしながらズボンと下着の両方に指をかけてずり下げる。

 女性らしい身体のラインが露わになり、心臓がバクバクと激しく鳴った。

 丁寧な手つきで湿布を貼ると、冷たかったらしく、「ひゃっ」と声を上げる。

 最後にぐっぐっと湿布を肌に押しつけてから服を元の位置に戻し、花帆の身体からどいた。

「ありがとう」

 花帆は起き上がると、どこか恥ずかしそうにはにかむ。
< 86 / 214 >

この作品をシェア

pagetop