【完】絶対に内緒のふたり暮らし♡1/2
“綾瀬 月子”……と。
結婚する前のお母さんの旧姓だった。
同時に、幼き日に私に話してくれたことが蘇った。
「閉じ込められてたって言ってた……お母さんは……ずっと魔女だって言われてて……」
今にも壊れそうな表札には、消えかかっているけれど、“魔女の部屋”と書かれているのがわかる。
「つまりここが、旧魔女の部屋ってわけか──」
虹くんの当惑した呟きに、胸が軋んだ。
間違いない……。
ここがそうなのだろう。
お母さんは、こんな閉鎖的な場所に閉じ込められていたのだ。
「……あれ? でも、ここにまだなんか書いてあるよ?」
砂ぼこりを手ではらってみると、お母さんの名前の隣にまだ文字があることに気づく。
それは後から手書きで書かれたようなもので、見落としてしまいそうなほどだった。
虹くんと私は目を凝らして顔を近づけた。