きっと、月が綺麗な夜に。
その後、現実では目が覚めたら病院で、りょーちゃんが僕を引き取ってくれて、日を経て正式に養子縁組をし、僕は何でも屋の息子の『冴島虎治郎』になった。
けれど、夢の中の僕は、また暗闇の中で母親を待ち、膝を抱えて『いい子』にしている。
ずっと眺めていた僕の手には、あの日手を取ってくれたりょーちゃんの反対側の手に握られたものと同じ黒い傘がある。
いつの間にか実体となった今の僕は、幼い僕に向かってゆっくり、ゆっくりと近付いた。
「帰ろう」
しゃがんで、幼い僕にそっと声をかけると、虚ろな瞳に光が差し込む。
僕が差し出した手を握り返した幼い僕の手を引いて、光の射す方へ共に歩み出すと、ずっと重荷を背負っていた気がしていた心が軽くなったような気がした。
『あの日』から泣いていない僕は、夢から目覚めたら泣いたりするのかな。
……ちょっと考えられない、かも。だって、泣くのはどうしてか、難しい事のような気がしてならないんだ。
それにしても、夢のはずなのに繋いだ手が温かくて柔らかい。それに、小さい手だけど子供の手というよりは……。
けれど、夢の中の僕は、また暗闇の中で母親を待ち、膝を抱えて『いい子』にしている。
ずっと眺めていた僕の手には、あの日手を取ってくれたりょーちゃんの反対側の手に握られたものと同じ黒い傘がある。
いつの間にか実体となった今の僕は、幼い僕に向かってゆっくり、ゆっくりと近付いた。
「帰ろう」
しゃがんで、幼い僕にそっと声をかけると、虚ろな瞳に光が差し込む。
僕が差し出した手を握り返した幼い僕の手を引いて、光の射す方へ共に歩み出すと、ずっと重荷を背負っていた気がしていた心が軽くなったような気がした。
『あの日』から泣いていない僕は、夢から目覚めたら泣いたりするのかな。
……ちょっと考えられない、かも。だって、泣くのはどうしてか、難しい事のような気がしてならないんだ。
それにしても、夢のはずなのに繋いだ手が温かくて柔らかい。それに、小さい手だけど子供の手というよりは……。