きっと、月が綺麗な夜に。
そして、数歩歩いて僕たちの方を振り返りまた短く鳴き、僕たちを待つかのようにまたすん、とその場に座った。


「ねえ先生、これ、クロミついてこいって言ってるんじゃない?」

「すごぉい!行こうよ!猫さん集会の場所に案内してくれるかもよ!」


武明先生から聞いた話の通りのファンタジーが現実で起きている。時間的に、子供達が一緒だと危ない気がするが、きっと僕が止めても二人だけでついて行ってしまいかねない。その方が危険だ。


……まあ、僕もこの先に何があるか、ちょっと、ちょっとね、気にはなるんだけど。うん。


「仕方ない、行くか。その代わり、二人とも僕から離れないで」


僕の返答を聞いて嬉しそうに頷く二人に、僕も短く頷くと、僕たちがついていく意思を持ったことを理解したかのように、クロミは再び歩き出す。


小さな島、くすんだ空が夕焼け色に染まる前。不思議な色合いも相まってか、海で囲まれた籠のような、迷子になるところもない狭い場所なのに、冒険の香りに生徒と共に胸を鳴らしてしまう。
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