きっと、月が綺麗な夜に。


今晩も相変わらず、美矢の食べっぷりは気持ちが良い。毎日朝晩は見ているのに、未だに全然飽きない。


「ほんと、どこに入ってるんだろうね、不思議だよ」

「とらは低燃費だよね。あたしの3分の1しかいつも食べない」

「僕はそうかもだけど、それにしてもだよ」


夏休み中、武明先生が奥さんが研修で島を1晩空けた日にうちで食べて行った時、どっちが多く食べたか分からないくらいもりもり食べていてりょーちゃんが大変そうだったのをふと思い出した。

あの大男と同じ量小さな体に入っていくんだ、人体の神秘だと思う。


「今度の土曜日、しこたま素麺買って流しそうめんでもやろうか」

「いいね。夏の最後の思い出だね」


庭栽培の夏野菜達を全部収穫して、外で薪でもくべて素麺を大鍋で茹でて、そんな夏の終わり、こんな大人になって味わえる青春みたいな時間は、多分この島じゃなきゃ味わえないだろう。


僕達の話を「いいねー」なんて少し遠くでりょーちゃんが相槌を打つ。
そんなりょーちゃんは、すっかり家猫化したクロミの爪切りに悪戦苦闘している模様。

抵抗の声を上げつつも暴れないクロミの爪を切る軽快な音が、心をほっこりとさせた。
< 110 / 213 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop