きっと、月が綺麗な夜に。
長年傷を抱えたままだった僕の1番近くにいたりょーちゃんも、僕の家族として色々悩んだり、考えたりしていたのかもしれない。

自分が保護者として至らないから忘れられなかったんだとか、変に悩ませていたのなら申し訳ないな。
りょーちゃんと築いた6歳から15歳の間の時間と、島に戻ってきた22歳から今までの時間、りょーちゃんへは感謝と幸せし感じていないのに。


「この間の台風の日から区切りが付いたんだ。なんせ僕は待つのが嫌いだから」


もう、母の愛を待ち続けるいい子は止めよう。僕なりのスピードで、僕の手を取ってくれる人との時間を生きようと、やっとこの歳になって思えたんだよ。
なんて、伝えたいことは沢山あるけど、言葉にするのはむず痒い。


「美矢、君にも僕の昔話を聞いて欲しい。僕とりょーちゃんが家族になるまでのいきさつを。少し長くなるから、時間がもう少しある時にでも」


美矢のことは分からないことだらけ。でも、美矢にとって僕もそれと同じなんだ。
だから、まずは僕『冴島虎治郎』がどんな風に形成されたのか、改めてプレゼンしたい。

美矢は「もちろん」と短く返事すると、取り皿に盛ったおかずの最後のひと口を、ぺろりと綺麗に食べ尽くした。
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