きっと、月が綺麗な夜に。
土曜日、穏やかな晴れ間に包まれた休み。午前中は、怪我の経過観察を診療所でしてもらいうちに戻ると、りょーちゃんが庭でどこから入手したのか、流し素麺用に竹を切っているところだった。
庭にはクロミと、台風の日うちのガレージに避難した親子猫4匹が各々、香箱座りしていたり、蹴伸びしたり欠伸したりして寛いでる。
幾何学模様のワンピース姿の美矢は縁側から足を投げ出して、素麺の話をしたら「行きたい!」と駆け付けたケンゴと、持ち込んだらしいノートパソコンを見ながら会話しているようだ。
「とらおかえり。ちょうど良いところに来た」
「ただいま。ちょうど良いって、何が?」
おいでおいで、と緩く手招きした美矢のところに僕も緩やかに向かうと、どうやら、この間撮影していた動画が出来上がったものを見るらしく、ノートパソコンは再生の手前まで来ていた。
「この間も思ったけど、ケンゴ機材整ってるね」
「うん、カメラとかマイクとかライトとか、そういうのは地道にフリマアプリで買ってて。パソコンは型落ちのソフト入ったままでお古で貰って」
「ああ、お世話になってるデザイナーさん?有難いね」
努力して、時には繋がった縁で整えた環境は、彼の成長をきちんと支えている。