きっと、月が綺麗な夜に。
僕が選んだ曲は、海外でも人気の日本のロックバンドの、最高のラブソングと呼び声高いバラードナンバー。

指弾きのアルペジオ進行が中心のメロディに、男性にしては高いキーのこの曲。

意識はしてないけれど、僕の歌声は声量がないせいか囁くようなウィスパーボイスだ。普段は特別高くも低くもない声なのに、歌うと高いウィスパーボイスになるのは父譲り。

父の弾き語りを毎日聴いていたせいか、歌い方が似てしまったのだろう。だから、母はそれを受け入れられず、愛せなかったのかもしれない。

ラブソングを好きな女の子の前で歌うのは、緊張するしかなりむず痒い。

だけど、今僕が美矢に伝えたい想いが、英歌と日本詞の入り交じるこの曲に詰まっている気がして、不思議と、ほろほろと想いが落ちるように歌えてしまう。

この先もずっと君を愛してる。君がどこにいても、君がどんなものを抱えていて、どんなことをしようとも。


……なんて言葉にして伝えるのは難しいことも、歌にするとこんなにもスムーズに伝わる。

美矢は、歌うことで誰に何を、伝えようとしてくれていたのだろう。君ほど、心に刺さる歌声を僕は知らない。
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