きっと、月が綺麗な夜に。
僕のその言葉に泣きながら目を細めて、にい、と口角を上げた美矢の顔に2つ、三日月が横たわってるみたいな放物線が描かれた。
「もう大丈夫。ありがとう。……とらが歌ってくれたから、あたし、話すね」
「無理、しなくても良いんだよ?」
「ううん。今は聞いて欲しい気分」
泣いて、笑って、起伏は激しくない筈なのにいつだって感情に正直な美矢は、少女のあどけなさの残る、でも、もう子供じゃないその顔で僕を見据えた。
その顔にまた、どうにも気恥しい気持ちがぶり返し、美矢に触れていた手をそっと引っ込めて視線を庭の方へと移す。
「とらは優しいから、周りの愛情とかちゃんと受け止めて、愛してくれない肉親でもちゃんと愛してて、凄いね。あたしは違う。……あたしは、絶対愛せない。あの人だけは」
星と月と、後ろの部屋からの光しかない薄暗くて藍色の世界で、高くも低くもない、抑揚のあまりない美矢のゆったりとした言葉が丁寧に、紡がれていく。
「あたしのお父さんも、あたしが小さい頃に亡くなったの。バイクの事故でらしい。小さい頃すぎて記憶は無いけれど」
そしてこれまで見せてこなかった美矢の傷が、藍色の世界の、心もとない月の光に照らされる。
「もう大丈夫。ありがとう。……とらが歌ってくれたから、あたし、話すね」
「無理、しなくても良いんだよ?」
「ううん。今は聞いて欲しい気分」
泣いて、笑って、起伏は激しくない筈なのにいつだって感情に正直な美矢は、少女のあどけなさの残る、でも、もう子供じゃないその顔で僕を見据えた。
その顔にまた、どうにも気恥しい気持ちがぶり返し、美矢に触れていた手をそっと引っ込めて視線を庭の方へと移す。
「とらは優しいから、周りの愛情とかちゃんと受け止めて、愛してくれない肉親でもちゃんと愛してて、凄いね。あたしは違う。……あたしは、絶対愛せない。あの人だけは」
星と月と、後ろの部屋からの光しかない薄暗くて藍色の世界で、高くも低くもない、抑揚のあまりない美矢のゆったりとした言葉が丁寧に、紡がれていく。
「あたしのお父さんも、あたしが小さい頃に亡くなったの。バイクの事故でらしい。小さい頃すぎて記憶は無いけれど」
そしてこれまで見せてこなかった美矢の傷が、藍色の世界の、心もとない月の光に照らされる。