きっと、月が綺麗な夜に。
親に囚われて辛い思いをした僕と美矢。どんな運命の悪戯か、僕達はこうして、心もとない三日月の光が差し込む自然豊かな場所で、こうして寄り添っている。


「……引いた?」

「全然。美矢が今、僕の隣にいてくれてるからそれで良いかなって思ってる」


さっき話を終えた僕と全く同じに問いを投げた美矢に、僕も同じ答えを投げかける。


「親に愛されなくても、誰かが愛してくれるのをあたしは知ってるから、あたしは拾ってもらった命でクソみたいに長生きしてやろうと思ってる」

「それは同感。僕もクソみたいに長生きしてみせるよ。どっちが長生きするか、勝負しよう」

「ふは、あたしの方が有利じゃん?若いし女だし」


辛かった過去や秘密は多分、これからも消化しきれず付きまとうけど、僕も美矢も大丈夫。だって、こうして笑っていられる。


「ね、とら、あたし気づいたの」

「何?どうしたの?」


すっかりいつも通りのペースでリラックスした美矢は、また愛おしそうに僕の腕の傷跡を眺めると、今度はそっと、自分の左腕のTシャツを捲りあげた。
< 136 / 213 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop