きっと、月が綺麗な夜に。
「みゃあ子くん大丈夫か?りょーさんと同じような顔色になっているではないか」

そんな美矢の様子に、武明先生は珍しく心配そうに表情を曇らせて様子を伺う。

二日酔いで土気色の肌色でクロミに甘噛みされて「痛い、痛い」と時折声を漏らすりょーちゃんを引き合いに出す独特さは健在だけれど。


「……別に。あたしが白いのなんて元々っしょ」


その優しさと独特さと、気づいていなさそうな感じに少しほっとしたのか、美矢はいつも通りの声で返して、トメ子さん特製大根の、何味とも形容し難い美味しくてしょっぱいお新香をバクバクと食べ始める。


「美矢は毎日念入りに日焼け止め塗ってるよね。焼けたら赤くただれそうな肌してるし」

「最近は子供たちにもそんな子が何人かいるな。大変そうだ!」


話題を違う方向へ逸らすと、天然なのか意図的なのか、武明先生も僕の話に乗って、地元トークから完全に離脱する。

美矢はあまり表情の起伏が大きい方ではないけど、こうして長いこと自分のパーソナルに触れるかもしれない時、ヒヤヒヤしながら生きてきたのかな。

彼女を好きだと分かって、彼女の一喜一憂が読み取れるようになって、苦しい気持ちも、分かるようになってしまった。
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