きっと、月が綺麗な夜に。
話してくれた時罪悪感はないと言った美矢だけれど、ないわけが無い。彼女が非情になれない優しい子だということを、もう僕含むこの島の人皆が知ってしまっているから。

美矢は「ごちそうさま」といつもより少ない量のご飯を食べ終えると、席を立ち空いたお皿を洗いに立ち上がってしまった。

そんな彼女の姿をぼんやり眺める武明先生は、何だか、珍しく寂しげに見えないでもない。


「とらちぃ、悪いが帰り、うちに来てはくれないだろうか。先日しこたま釣ったイボダイを渡そうと思っていたが忘れてしまってな」

「え、ありがとうございます。りょーちゃん回復したら喜びますよ、貰います」


けれど、会話はいつも通り。夏から秋に移行した証の魚をくれると明るい声色で言ってくれた武明先生にほっと肩を撫でおろし答える。


「みゃあ子くんとクロミに沢山あげると良い。とらちぃも魚捌けるのだし、今日みたいにたまにはりょーさんを休ませてあげるのも良いだろう」

「そうですね。あの人も40手前だから何もしない日も必要ですね」


すっかりクロミに懐かれたりょーちゃんは、未だに離れないクロミに今度は顔を毛繕いされるように舐められて鼻を噛まれ、また「痛い!」と唸った。
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