きっと、月が綺麗な夜に。
「……僕は昨日、彼女の口から直接。僕の話をした時に」

島に来てまだ日が浅い時から分かっていて、それでも何も変わらず接していてくれた武明先生は、いくら天然だとかデリカシーが無いと言われても、やっぱりちゃんとした大人なんだ。


「そうか。みゃあ子くんが自ら発信したのならそれでいい。俺は全てを知っているわけじゃない。あの子の語ったことがきっと全てで、それをお前さんだけが知っている。それがベストだろう」


柄にもなく大人の意見を述べた武明先生だけど、多分、本当は自分も美矢に寄り添ってあげたい気持ちでいっぱいなのだろう。

でも、その考えは少し違うんだと思う。美矢は多分、寄り添ってもらうことを望んでいない。それは、誰相手であっても。


「大丈夫ですよ。信用されてない、とかじゃないと思います。美矢は自分が寄り添いたい時に勝手に人に寄り添って、きっと勝手にまた離れるんです。なんせ、あの子は猫の擬人化なんですから」

「……そうだったな。みゃあ子くんはとりささみとチキンスープの味がするおやつが好きで、マグロもそこそこ、だったもんな」


武明先生は猫塚さんと美矢との初めての会話を引き合いに出し、思い出してついには笑い出す。

僕も、あの時笑えなかった分武明先生とあの会話を思い出し、堪えきれず笑った。
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