きっと、月が綺麗な夜に。


武明先生からの手土産を受け取り帰ると、音という音はテレビの音くらいしかしない。

貰った魚を冷凍庫へとしまい、そっと居間へと歩み寄ると、寝落ちしたりょーちゃんと、そのりょーちゃんを枕に眠る、美矢とクロミの姿がある。


「ふふ、可愛いな、皆」


その団子になった皆をそっとスマホに収め、起きた時にすぐに眠れるようにしておこうと、先に上のりょーちゃんの和室の寝床を整え、美矢の使っている客間の布団を敷きに降りる。

壁には毎日ちゃんと拭かれ、大事に弾かれる父の忘れ形見のギターが、美矢が来る前よりも堂々としているような出で立ちでそこにいる。

そっと手に取ると、昨日メンテナンスしたおかげでギターのネックと弦の空間が狭まっまたギターが、僕の手にもしっくり来る。


「おまえ、よかったな。美矢に弾いてもらえて。いいギターなのに今までコソコソ弾いてごめんな」


昨日、6歳の時ぶりに人前でギターを弾いて歌ったけれど、多分、僕はしばらくまたコソコソ1人の時にこいつを弾くのだろう。

賑やかで彩り鮮やかな場所へは美矢が連れ出してくれるから、皆が寝静まった時、家飲みみたいな僕の弾き語りに、たまに付き合ってくれればいいよ。
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