きっと、月が綺麗な夜に。
「ケンゴと15万人突破したら特別なことやりたいねって話しててさ……あたし、ちょっと悩んでること、あるんだ」


ギターを弾くのを止めて、足の間に挟み込んでぎゅう、と抱きしめた美矢の視線の先には、野良猫たちとじゃれ合うクロミの姿。


「何か、やりたいことがあるの?」

「……ん。あたしとケンゴの力だけじゃ絶対出来ないことで、あたしの勇気のいること」

「僕に出来ることは、ある?」


乱暴にじゃれ合っていたクロミと野良猫のうちの1匹の茶トラは、急に互いを毛繕いしだす。猫はやっぱりよく分からない。

美矢も正しく猫そのもの。抱いていたギターを僕と逆の隣に置いた彼女は、穏やかに目を閉じて、僕の方へ身体を向けた。


「ちょっと抱き締めてくんない?」

「ええ?だ、抱き、締める?」

「何うろたえてんの。それとも、嫌?」


嫌な、わけない。でも、うろたえるのが当たり前だろう?なんせ、愛だの恋だのそういうの含めて、僕は美矢のことが好きなんだから。

「ん」と催促するように短く声を出した美矢に、万が一りょーちゃんが覗いてたら、なんて食事の準備にさっき取り掛かったのを知っているはずなのにきょろきょろ、と辺りを見回して確認。

そして、恐る恐る美矢のふくふくとした柔らかな線の、小さな身体を自分の元に寄せた。
心の中で「失礼致します」と謎に丁寧に呟きながら。
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