きっと、月が綺麗な夜に。
「あー、安心する。とらの匂い」
「え、体臭……?嘘、臭う?」
「あはは、臭い方のじゃないって。臭かったらこんなこと頼まないっしょ」
僕の胸にしっかり顔を埋もれさせた美矢は、くぐもった声を出しながら頭をぐりぐり、と動かして小さな攻撃を仕掛けてくる。
その行動の全てが何だかくすぐったくて恥ずかしくて、甘えモードの猫みたいで可愛い。
「……あたしね、伝えたい気持ちがある。歌にしたい」
「うん」
「でも、あたしは言葉を知らないから作詞が出来ないし、ギターだけじゃ音が足りない。あたしだけの歌を作って、MVを作ってみたい……そのために、顔出しも、考えてる」
その決断が、彼女にとってどれだけの勇気が必要なことかなんて、僕には計り知れない。
おそらく、件のことがあったあと、美矢はマスメディアに良いように取材され、許可もなしに顔を晒され、周りから好奇の目で見られただろう。武明先生のように覚えている人もいるかもしれない。
件のことを他人に指摘されるのは、きっと彼女の傷口を強くえぐることとなる。
それでも、彼女が伝えたい想いとは何なのだろう。
言葉にする代わりに歌にする想い、とは。
「え、体臭……?嘘、臭う?」
「あはは、臭い方のじゃないって。臭かったらこんなこと頼まないっしょ」
僕の胸にしっかり顔を埋もれさせた美矢は、くぐもった声を出しながら頭をぐりぐり、と動かして小さな攻撃を仕掛けてくる。
その行動の全てが何だかくすぐったくて恥ずかしくて、甘えモードの猫みたいで可愛い。
「……あたしね、伝えたい気持ちがある。歌にしたい」
「うん」
「でも、あたしは言葉を知らないから作詞が出来ないし、ギターだけじゃ音が足りない。あたしだけの歌を作って、MVを作ってみたい……そのために、顔出しも、考えてる」
その決断が、彼女にとってどれだけの勇気が必要なことかなんて、僕には計り知れない。
おそらく、件のことがあったあと、美矢はマスメディアに良いように取材され、許可もなしに顔を晒され、周りから好奇の目で見られただろう。武明先生のように覚えている人もいるかもしれない。
件のことを他人に指摘されるのは、きっと彼女の傷口を強くえぐることとなる。
それでも、彼女が伝えたい想いとは何なのだろう。
言葉にする代わりに歌にする想い、とは。