きっと、月が綺麗な夜に。
「それって友達って呼べんの?とらの方は女として見てたのに?」

「3回告白してダメだったんだから友達だよ。しかも、3回目でやっとダメな理由分かったんだから仕方ない」


運転席側で楽しそうにしている優に「僕の告白した3回分の勇気返してよ」なんて悪態をついても、優からは「だはは」と笑いが帰ってくるだけ。


「だってさー、しょうがないじゃん、ボク、性自認男なんだもん。恋愛対象ももちろん女の子。でも女の子の服着るのもネイルもメイク楽しいから性転換とか考えてなくて、見た目も性別も女のままだけどね」


情報過多とはまさにこのこと。美矢は小さな頭で優の言ったことをぐるぐると考えて、今にも目を回しそうだ。


「難しいけど、すぐるんは綺麗なオネーサンじゃなくて、綺麗なオニーサンって思っていいんだよね?」

「そういうことかな。色んな人種がいるんよ、この世の中には」


体は女の子だけど、こいつは僕の中では男だし、自信を持って友人と呼べる存在だ。


「猫ちゃんももちろん女の子として可愛いと思ってるよ!動画を見た日からね。好みどストライクなんだもん」


この軽薄なおしゃべり野郎の更なる余計な一言に、美矢は毛をさかだで猫のようにひょ、と体を震わせた。
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