きっと、月が綺麗な夜に。


夕食は優行きつけだという韓国料理屋へと連れて行ってもらった。
今日1日食べられなかった分を取り返すようにガツガツと運ばれて来た食事を消化して行く。


「この子は胃袋に掃除機でも付いているの?どこに入ってるんだか」

「ほんとに。びっくりするでしょう?」


少食の僕や腸閉塞がちの優は早々に満足したのに、美矢はまだまだ半分も満たされてない模様。

「この間の動画の食事量、本当なんだね」なんて感心して笑う持て余しした優は、代わりにお喋りが止まらなくなる。

そんな優に付き合うのも慣れたもので、僕は美矢と出会ってからの話をしたり、逆に優の仕事のことを色々聞いたりして、時が流れる。

美矢との、あまり会話がなくても心地よい時間とはまた違って、あまり喋らない僕の分喋ってくれる優との時間もまた、心地よい。


「なんて言うか、言葉にするとめちゃくちゃ陳腐かもだけど、2人は運命なのかね、出会うべくして、みたいな。とらちゃん、今度は片想いで終わらなきゃいいね」

「うるさい。最後の一言は君が言って良いことじゃない」


僕たちの話なんかちっとも聞いてないない美矢を尻目に、僕は余計な一言の多い大切な友人に、チョップをひとつお見舞いした。
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