きっと、月が綺麗な夜に。


ご飯を食べ終えた後は、優が1人で住む4LDKの一軒家に案内され、美矢に各部屋のとか洗面台の場所を一通り教え、優は仮音作りにプレハブ小屋へと戻っていってしまった。


「すぐるんはこのデカい家に一人暮らしなの?」

「ああ、なんか高校卒業と共にお父さんはシンガポールで起業してお母さんもついて行ったとかで。今はここは優名義の優だけの城らしいよ」


「へえ」なんて興味もそこそこ、美矢はふかふかそうな大きいビーズクッションに深く座り込み、怒涛の疲れを癒すように体を丸めた。

耳コピが得意なくらいだから作曲の基礎はありそうな美矢だけど、話で聞いている限り初めて1から曲を作っているようだ、緊張や疲れもあっただろう。

けれどだるそう、というよりは、何だか充実した顔をしている。
しかしながらそれは、実はご飯を食べた充実感が顔に滲んでいる方なのかどうなのか、真実は定かではないが。


「ちょっと寝たらすぐるんの作業少し見せてもらいたいな。とら、30分後に起こして」

「やめときなよ、行ったらあいつにしこたま歌わされるよ、弾き語り聴きたそうだったし」


そう言って美矢の顔を覗くと僕の話なんて聞いていなくて、ものの数秒もしないうちに夢の中へと落ちていた。
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