きっと、月が綺麗な夜に。
「……話したつもりが忘れてた。スマホも見てないわ」

「僕もりょーちゃんに帰る連絡の電話する以外スマホ触ってなくて、ごめんね」

「なんなの2人とも、スマホの意味!」


あまりに現代人っぽくない僕たちの返答に、ケンゴはツッコミを入れてその後苦笑して、美矢の右隣へと腰を下ろす。


「話さなきゃいけないことがあるね、美矢から。ついでに優から貰った音源データ取ってくるからその間に話してなよ」

「うん、ありがとう」


多分りょーちゃんから満足の行く理由を聞けなかったようで、状況が把握出来ていないケンゴに「あのね」とこれまでの経緯と提案を美矢が話し始めたのを確認し、僕は自室に置いてある音源データの入ったUSBを取りに向かう。

ケンゴはあれを聴いて、どんなリアクションを取るのだろう。どんな作品にするのだろう。

これから、出来上がった音源が映像に変わる。僕の専門外の分野だからそれは未知数だし、楽しみでしかない。

あ、MVの撮影日程が決まったら優に連絡しなきゃ、行けたら立ち会いたい、なんて言ってたし。
そうなるとケンゴと優が挨拶を交わすことになると思うけど、優は外見だけは『綺麗なおねーさん』だから、きっとケンゴの面白いリアクションが見れることだろう。
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