きっと、月が綺麗な夜に。
僕が戻ると、美矢は優とのレコーディングについてケンゴに話しているようだった。
ケンゴの手に持たれたスマホの検索画面には『優 音楽プロデューサー』と検索されていて、検索結果にはWeb百科事典が表示され、見慣れた奴の写真まででかでかと出ている。
「聞いてない。こじろうこんなすごい人と知り合いなんて知らなかったんだけど」
「ええ……そんな責めるような目で見られても。同じ大学出身で、友達なんだよ」
僕の答えに「ほへえ」と間の抜けたリアクションをしたケンゴに、いつも通り変わったリアクションだな、可愛いな、なんて少し笑いながら取ってきたUSBと、今日はノートPCを持ってないようだったから変わりに僕のパソコンを持ち出して、聴かせてあげれるように準備し始める。
「はい、どうぞ」と準備したヘッドフォンを差し出すと、ケンゴはソフトモヒカンに整えられた髪の毛のせいであらわになった大きめの耳を、ヘッドフォンで優しく塞いだ。