きっと、月が綺麗な夜に。
今時の女の子は、こんなにも貪欲に、一心不乱に食事をするものなのだろうか。
目の前の、僕よりずっと小柄でやわっこい少女は、某有名アニメの世界の登場人物かのように、りょーちゃんが張り切って作った島自慢の魚介の天ぷらと白飯、それから新鮮な野菜たちを勢いよく、しかし、やたら綺麗に吸収していく。
その姿をつまみに僕とりょーちゃんは日本酒で晩酌をしているわけだが、この食べっぷりはうちに来るたびおかず3人分ペロリと平らげてしまう武明先生に匹敵するだろう。
しかし武明先生は身長190センチ前後のがっしり体育会系。体積がそもそも違うはずなのに、やはりこの少女、ファンタジーの住人なのか。
「はっはっは!よく食うねー嬢ちゃん。美味いか?よっぽど腹が減ってたんだな」
「んまい。おかわり」
そのあまりの食べっぷりに感心して気をよくしたりょーちゃんは、よくよく考えるとまだ名前すら名乗ってない失礼なこの少女の短い『おかわり』の一言にでさえ、嬉しそうにニコニコと応じ、武明先生専用の大盛り丼茶碗に追加の白米をもりもりと乗せていた。
さすがにぼけっとその光景を眺めているだけじゃいけない気がしたので、僕はちっとも食の勢いが落ちないその少女にゆったりと質問を始める。