きっと、月が綺麗な夜に。
Ep,1
拾ったファンタジー
本土から1日5本程度しか船が出ない小さな離島。それが、僕が住む場所だ。漁業が主だった仕事で、特徴といえばまあ、その盛んな漁業と、この島特有の穏やかな漁師のおっちゃん達にすっかり餌付けされ、増えまくってる猫の量くらいか。
本土の連中から密かに『猫の島』なんて呼ばれて、観光シーズンなんかはほんのり観光客が増える、そんな小さな世界で僕は毎日ゆるりと自転車を使い職場へ向かう。
小さな離島なため、この島唯一の小中学校。生徒数に比べ遥かにだだっ広いその校舎と校庭が、僕の生活の中で一番多く過ごす場所だ。
「こじろう、おはよー!」
「先生な、せ・ん・せ・い!おはよう!」
夏休みなのにせっせと朝から学校にきている中学部の生徒の一人になめられつつも挨拶をし合うのももはや日常で。軽やかに走って行く青臭い背中を見送り、僕も自転車を所定の場所へ止めて、職員室へと向かった。
この小さな島の唯一の学校、そこの新米小学校教諭、それが、僕を僕たらしめるステータスだ。