きっと、月が綺麗な夜に。
しかし、美矢は詮索したりしない。じゃあなんでいつでも弾けるくらいメンテナンスが施されているのか、とか、諸々。
あえて聞かないでくれているのか、それとも、そこまで深く考えてないのか、読みかねるな、この子は。
よいしょ、と短く声を上げ立ち上がった美矢は、何を思ったのか、すたすた、とまっすぐギターの方へ向かい、それはそれは丁寧にそいつを持ち上げ、再び僕の隣に腰掛ける。
「じゃあ、あたしが弾いてもいいよね?ここにいる間。メンテナンスもあたしがやるからさ」
「え、ちょ……」
お願い、という感じではなく、僕が返事する間もなく、チューナーも無しにチューニングを始めた美矢は、それはもう、手慣れたもので。
さくさくとその作業を終えた美矢は、そのギターに息吹を注ぐかのように指を落とし、小さく息を吸った。
その瞬間、世界の輝きがぶわあ、と増して、僕の見える世界全てのものが色めき、でも、ゆったりと優しい香りに満ちる。
喋りは抑揚のない、比較的低い音なのに、歌うと柔らかく高く、鼻の奥を拡声器にして音を響かせるような歌声だ。
ビブラートするでもないシンプルな歌い方だけれど、その分、歌詞が心にストレートに刺さってくるよう。美矢の歌声に余計な飾りなんていらないだろう。
あえて聞かないでくれているのか、それとも、そこまで深く考えてないのか、読みかねるな、この子は。
よいしょ、と短く声を上げ立ち上がった美矢は、何を思ったのか、すたすた、とまっすぐギターの方へ向かい、それはそれは丁寧にそいつを持ち上げ、再び僕の隣に腰掛ける。
「じゃあ、あたしが弾いてもいいよね?ここにいる間。メンテナンスもあたしがやるからさ」
「え、ちょ……」
お願い、という感じではなく、僕が返事する間もなく、チューナーも無しにチューニングを始めた美矢は、それはもう、手慣れたもので。
さくさくとその作業を終えた美矢は、そのギターに息吹を注ぐかのように指を落とし、小さく息を吸った。
その瞬間、世界の輝きがぶわあ、と増して、僕の見える世界全てのものが色めき、でも、ゆったりと優しい香りに満ちる。
喋りは抑揚のない、比較的低い音なのに、歌うと柔らかく高く、鼻の奥を拡声器にして音を響かせるような歌声だ。
ビブラートするでもないシンプルな歌い方だけれど、その分、歌詞が心にストレートに刺さってくるよう。美矢の歌声に余計な飾りなんていらないだろう。