きっと、月が綺麗な夜に。
漁船場に着くと、そこには派手なアロハシャツに短パン姿の大男が観光客にジロジロ見られることも全く気にする様子もなく立っていた。


「ねえとら、もしかしてなんだけど、あのでっかい喋ったら暑苦しそうな人と待ち合わせてないよね?」

「うーん、あのでっかい喋ったら暑苦しそうな人かな、ごめんね」


明らかに美矢とはそりが合わなそうな風貌の武明先生。島のじじばばからもりょーちゃんと武明先生は二代太陽神とか崇め奉られているくらいだ。

ただりょーちゃんと武明先生が全く違うのは、武明先生は声と体が島一番にでかいのと、あの風貌からは想像できない天然さとピュアさの持ち主だというところか。


僕の姿をそのマサイ族並みの視力で発見した武明先生は、その大きな手を腕ごと、両手とも大きく頭の上で降っている。しかも、島一番のその声量で恥ずかしい僕のあだ名を呼びながら。


「朝からうるさいですね。あなたは」

「おはようとらちぃ!お前さんこそこんな清々しい朝になんてドライなんだ!現代っ子め!……それより、そちらは?」


おかげで観光客に僕までジロジロ見られる羽目になった仕返しに、この暑苦しくて天然でピュアな大男をからかってやろうと思う。
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