きっと、月が綺麗な夜に。
釣りの時間は2時間程だったが、僕がバンバン小魚を釣り上げたのと、あの後武明先生も真鯛を2匹釣り上げて大漁に大満足し、早めに切り上げて解散した。
僕の腕にぶら下がった保存ボックスはずっしりと重い。この重さ分、命がたっぷり詰まっているのだ。
この数時間ですっかり疲れたのか、元々猫背気味の美矢はもっと背中を丸め、とぼとぼと僕の斜め後ろを着いてくる。
「一旦家に帰って、本当は島の色んなとこ案内しようかなって思ってたんだけど、無理そうだね」
「……ん。帰ったら、ねる」
新しい人間と知り合い、知らなかったものに触れ、疲れて英気を養うために眠る。そんな美矢は純新無垢な子供かまたは、やはり猫のようだ。
「よく頑張ったね。凄いよ、あの大物、りょーちゃんに美味しく調理してもらおうね」
「……ん」
だいぶ眠たいらしい美矢は、本当に猫が化けているんじゃないかと思ってしまうほどその瞳をくにゃくにゃと細め、弧を描き、そして、その小さな頭をぐりぐり、と僕の腕に押し付けた。
知ることが沢山ある。この狭い島が全ての世界で、変わり映えなんて無かった毎日に、美矢がどんどん新しい何かを見出して、彩りを鮮やかにして行く。