きっと、月が綺麗な夜に。
昨日も一昨日もちゃんとした場所でしっかり眠れたのが美矢にとって良かったことなのか、船の上での美矢は上機嫌そうに鼻歌をその綺麗な歌声で歌っている。
今日は新しい曲だ。僕たち世代が学生の頃から売れているバンドと、最近流行りの女性シンガーソングライターの話題になったデュエット曲だ。僕も好きで良く聴いているからすぐ分かった。
「美矢はさ、将来歌手になりたいの?本当に歌、上手いよね」
邪魔しちゃいけないのは重々承知なのだが、穏やかに鼻歌を奏でる彼女の視線に収まりたいな、なんて気持ち悪い下心が少し湧いて、思わず彼女に話しかける。
すると美矢は歌の延長線上のままん、と僕に相槌を打って、鼻歌を止めた。
「そういうことは考えてない、かな。歌うのは好き。育ててくれたじーちゃんが音楽パブのマスターだったから、昔から音楽に触れてきたし」
「動画配信でもやればいいのに。君ならすぐ伸びるよ、きっと」
「ありがと。でもいいかな、人前とかキライだし」
返答が美矢っぽくてしょうがない。やっぱりどこまでもマイペースを貫く彼女に、くすりと笑みが零れた。
今日は新しい曲だ。僕たち世代が学生の頃から売れているバンドと、最近流行りの女性シンガーソングライターの話題になったデュエット曲だ。僕も好きで良く聴いているからすぐ分かった。
「美矢はさ、将来歌手になりたいの?本当に歌、上手いよね」
邪魔しちゃいけないのは重々承知なのだが、穏やかに鼻歌を奏でる彼女の視線に収まりたいな、なんて気持ち悪い下心が少し湧いて、思わず彼女に話しかける。
すると美矢は歌の延長線上のままん、と僕に相槌を打って、鼻歌を止めた。
「そういうことは考えてない、かな。歌うのは好き。育ててくれたじーちゃんが音楽パブのマスターだったから、昔から音楽に触れてきたし」
「動画配信でもやればいいのに。君ならすぐ伸びるよ、きっと」
「ありがと。でもいいかな、人前とかキライだし」
返答が美矢っぽくてしょうがない。やっぱりどこまでもマイペースを貫く彼女に、くすりと笑みが零れた。