きっと、月が綺麗な夜に。


定刻通り船を降り、5分少々遅れたバスに乗り、レンタカーを使って県内屈指のアーケード街へようやく到着する。


「ここ、あの市電っての?に乗った時通ったけど、中こんな風になってるんだ」


様々な店や路地が入り組んだアーケード街に、いつもより少し語尾の上がった声でそう言葉を漏らした美矢は、彼女がいかにも着てそうな服のオンパレードな古着のセレクトショップの前で立ち止まる。


「じゃあ、時間まで自由行動で。何時にどこ集合?」

「17時半の船に乗りたいから15時頃にそこのオブジェの前にいてくれたら良いかなと思うんだけど、君、時計とか、スマホは?」

「……あー、どっちも、手持ちなしっす」


時計はともかく連絡手段であろうスマホすら持たない年頃の女の子って、一体何なんだ。


まだ出会って3日。知らないことだらけ。
彼女はどこから支出しているかも謎だ。生い立ちも『家族はいない』としか。

語りたがらないから聞かなくても良いかな、と思ったけれど、高校卒業しているらしいとはいえある程度聞いとくべきだろうか。
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