きっと、月が綺麗な夜に。
その後の美矢といったら、相変わらずどこに入っているのか分からないくらいの量を、見ているだけでお腹いっぱいになりそうな勢いで食べている。
「きっと胃袋ブラックホールって、君みたいな子の為の言葉なんだと思うよ」
「あたしからしてみりゃ、こんなんまい飯目の前にその量しか食べれないとらの方がヘンだよ。おかわり」
本日3度目のおかわりをりょーちゃんに催促した美矢の晩御飯は、まだまだ終わらなそうだ。
食が細い僕を長年見てきたりょーちゃんは、自分の作ったものを『んまい』と何度も言ってくれる美矢に笑顔が溶けそうな顔をしている。
僕だって食が細いだけだ。りょーちゃんのご飯は昔から『んまい』し、多く食べれないぶん味わって大切に食べているつもりだ。
自分の皿とクロミの皿を一足先に片付けた僕は、すっかり馴染んで僕の足に抱っこモードに突入したクロミをひょいと持ち上げ膝に乗せ、それに乗じて買ってきたクロミの首輪を着けることにした。
今日歩き回って、偶然見つけた名前のない小さなブティックにあった、美矢がクロミの足に巻いてくれたスカーフの柄と似た柄の、くしゅくしゅとした質感の首輪だ。