きっと、月が綺麗な夜に。
「良く見つけてきたなー、このスカーフとそっくりだ」

「今流行りの柄なのかな?僕もこれだって思って」


首輪をすんなりと着けさせてくれたクロミに、僕は人差し指を挨拶代わりに差し出した。そうするとクロミも、僕の人差し指をくんくんと嗅いでペロリとひと舐め。


「これで君も家族だね。末永く、よろしく」


きっと賢いであろうクロミは、僕の言葉を理解したのだろうか、美矢とどことなく似た高くも低くもない声で『なおん』と短く鳴くと、僕の膝から降りてリラックスモードで毛繕いし始めた。


「良かったね、クロミ。家族が出来たね」


和らいだ表情でクロミを見ていた美矢は、すっかり何も残ってない綺麗な皿を目の前にそう呟くと『ご馳走様でした』と手を合わせて食事の終わりを告げ、残りの皿を手際良くかき集めてキッチンへ向かう。

美矢を育てた人はきちんとした人だったことが伺える。彼女は自分の皿を何も言わなくてもちゃんと洗うし、靴もちゃんと脱ぐ。洗濯物もちゃんと手伝うし、挨拶とか、いただきますやご馳走様をちゃんと言える。

彼女のパーソナリティはまだまだよく分からないが、突拍子もない気分屋でいて、育ちはかなり良い。
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