きっと、月が綺麗な夜に。
「美矢、君にもあるんだよ、プレゼント」

「え、あたし?」


手際良く皿を洗う美矢に、僕は少し声を張って告げると、美矢も、彼女にしては少し張った声で返答し、シンクをキッチンペーパーでさっと拭って全てを終わらせた美矢は、こちらへととことこ寄ってきた。

今日の大荷物をゴソゴソと漁り、戦利品達を並べてみる。


「まずスマホ。島は狭いからそう必要にならないかもだけど、一応ね。また今後本島に行くこともあるだろうし」

「すっかり忘れてた。ありがと。高かったでしょ?いいの?」

「良いよ。僕お金あんまり浪費しないし大丈夫だよ」


連絡手段が無いと、ふらっとどこかに消えてしまいそうな美矢だから、消えたら二度と会えないかも、なんて不安もあるからっていう本音もあったのだけれど、それは胸に留めることにする。


「それからギターのピック。君も買ったかなとは思うけど、何だか可愛いものを見つけて」

「いや、それが忘れてた。クロスと掃除スプレーと弦はたんまりかったのに。有り難い限り」


どうやら同じ楽器屋に立ち寄ったらしく、同じ色の袋から自分の買ったものをガサガサと出した美矢は、出し終えて僕を見上げ、ふにゃ、と初めて見るような綻んだ顔で笑った。
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