きっと、月が綺麗な夜に。
Ep,2

ずいぶんなメルヘン




9月。それはまるでサーキットのバイクのような、競艇の船のような、派手な音を立てて過ぎ去るあれに近いスピードで通り過ぎた夏休みが終わり、久しぶりに子供たちとの学びが始まる新学期が訪れた。

まだまだ暑さは引かず、9月いっぱいは夏として扱っても良いだろう、なんて思うくらいの茹だるような暑さ。

朝起きて顔洗いに下に降りた時チラッと見えたクロミがフローリングにへばりついて寝てる姿を目撃して、可哀想だけど可愛いな、と顔が綻んだ。

今日も動きやすいベージュのTシャツに、カーキ色の吸水性のある7分のインナーを合わせ、パンツもインナーに合わせてカーキのベイカーパンツにする。

先生だからスーツじゃないの?なんて思われがちのこの職業だけど、こんな小さな離島の学校だからその辺は実は煩く言われないし、スーツは動きにくいから子供たちとドッジボールしにくいしこの環境は有難い。

いつものモーニングルーティンで庭に打ち水と、今日は家庭菜園にも水やりしなきゃ、なんて思って縁側へ向かうと、そこには既に先客がいた。
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