きっと、月が綺麗な夜に。
「もしその話がトメ子さんの夢じゃなかったとしたら、あの人に懐かないツンデレ猫のクロミが、誰かに足に布を巻かれるほど急接近したと。そして、多分クロミがその人物のところへトメ子さんを案内しようとしたことになりますね」

「おう!現実の話だと思いたいなぁ?なんか、あのクロミがそうしたいと思える人間見てみたいしよ」

「そうですね。島の妖怪ジジババにも、若い大人にも、子供達にも懐いてるとこ、見たことないですからね」


こんな話で盛り上がれるこの島は、今日も大概平和だ。なんせ家のドアを開けっ放しにしていても何も起きた試しがないのどかな島だから、こんな話もトピックスに上がる。


「さ、手止めてないでもうひと頑張り。僕の方終わりますから拭くの手伝いますよ。終わったら昼飯食べて、あとは足りないもの作りましょ」

「とらちぃは見かけによらず体力あるねー。んーまあ、ゆるりとやりますか!」


確かに、僕は肉付きも良くないし肌も焼けないから真っ白いから体力なさそうかもしれないが、武明先生は見掛け倒しの筋肉なんじゃないかってくらいマイペースでゆったりめで、キビキビ動かない人だ。

しかし、そんな性格だからこの人はこの島にすぐ馴染めたのだろうとも思う。この、わははと太陽が燦々と照るような笑顔が、爽やかで明るく、ゆったりとしたこの島にマッチしているのは認めざるをえない事実なのだから。
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