きっと、月が綺麗な夜に。
今日は遅いしまた明日にでも話そう、ということになり、ケンゴの連絡先を個人的に聞いて、美矢とも連絡先を交換したのを見届けて、りょーちゃんが家まで送り届けることに。
「あ、ケンゴの奴、美矢の弾き語り聴きたいとか言ってたのにすっかり忘れて帰っちゃった」
「んー?まあそのうち見ることになるんじゃん?しかしあの子、良いね。なんかひとつのことに真っ直ぐ集中型って感じ」
僕から見ると十分少女の美矢だけれど、年下の子供たちに対する彼女はちゃんとお姉さんだな、なんて感心してしまう。
「自分がやりたいことがちゃんとあって、でも、親のこと思いやってるから悩んで、周りの大人をちゃんと頼って……なんか、良いよね。あたしは、そうじゃなかった、かな」
ボソリと呟いたその言葉は、どんな感情で発されたものなのだろう。
会話の端々からでも分かる。美矢は多分、僕と似たような境遇の子だ。
親がいなかった、親に愛されなかった、親と向き合えなかった、しかも、あまり良くない理由で。
「さあて、お風呂入って寝よっかな」
猫背をんん、と伸ばして体をぐるんと回した美矢は、まるで掴めない。知りたいことは山ほどあるのに。