きっと、月が綺麗な夜に。
「美矢、先に行くよ」

「あ、ねこじぃごめん、今行く」


大勢の場が嫌いな猫塚さんはさっきの職員室みたいにぴゅーっと出て行く勢いだ。

そんな猫塚さんに短く返事した美矢は、千明にも「じゃね」と短い挨拶を残して、また音も立てずに教室を出て行ってしまった。


「かっこいいなあ、美矢さん。憧れる!美少女さんだし、歌も上手いし」

「千明は千明でしっかり者で可愛いんだからそのままでいて。君が思うより、あの子大人じゃないから」


マイペースで、気分屋で、ふわふわしてて掴みどころのない美矢の生き方は千明からすればかっこいいだろうが、この先長い人生を思うと千明には今のまますくすく育って欲しい。
なんせ、美矢みたいにメンタルも強くないとあの性格じゃ生きづらすぎる。あれは特殊なんだ。


「先生、そうやって自分が1番美矢さん知ってますーって顔してるといつか損するよ。美矢さん島の若い大人に可愛いって騒がれてるんだから。けんごくんも好きっぽいし」

「え」


ませた発言をした千明は、ふん、と笑ってケンゴを指さすと、自分も給食の配膳の方へとさっさと並びに行ってしまう。

指をさされた方を見ると、ケンゴは美矢が出て行った方のドアをずっとそわそわと、時おり視線を泳がせながら眺めていた。
< 87 / 213 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop