きっと、月が綺麗な夜に。
男二人でのちょっとした肉体労働をこなし、ゆったりと定時に仕事が終わり帰路に着く夕方頃。それでもこの季節は夕暮れには程遠く、しかし、太陽も定時を終えるために少しだけ、空をくすませ始めている。
「こじろーせんせー、こんばんわー」
「こんばんわ、ちあきにたかひと。遊びの帰りか?」
「うん、あのねー、公園でねー、皆とかくれんぼしたりして遊んだのー!」
校門を出た頃、学校の生徒の5年生千明と、弟の1年生貴人が公園で遊んでいた帰りらしく、僕は二人と共に帰るために自転車を押し、ゆっくりと歩み始める。
この島の小中学生は、小学生全学年で14名、中学生1名だ。顔と名前は全員しっかり把握している。
千明と貴人のところはお祖父さんとお父さんが漁師で、お母さんは漁港近くの民宿で働いている家庭で、普段は二人で遊んでいる仲良し兄弟だ。
「先生は今日はどんな仕事だったんですか?」
「今日は武明先生と運動会の使うものの準備とか色々」
「へー、武明先生おしゃべりだから、先生クールだし大変だったねぇ」
貴人は年相応の元気な男の子だが、千明はさすが女の子。日々喋り方が大人っぽくなっていて、弟の分もしっかりしている。