一匹狼くん、 拾いました。弐
「……俺の顔にしか価値がないってことを、ここにあるアルバムが証明してんだよ。……いや、違うな。父さんが俺の顔にしか価値がないと思ってるのを、ここにあるものと、今までの父さんの態度が証明してるんだ」
「み、ミカ」
仁が俺の顔色を伺う。
俺は仁を見てから、露麻の胸ぐらを掴んだ。
「……なぁ露麻、お前、このアルバムの中身見たことないわけじゃないだろ。それなのに俺になんの忠告もせずに見せたのは……なんだ、お前と父親を虐待の罪で裁いた俺への当て付けか? それともなんだ、俺がショックを受けないとでも思ったのか?」
「ち、違います、私は俊平様にも真実を知る権利はあると思って」
胸ぐらから手を離す。
「こんなくそったれた、馬鹿げた真実を? ハハハハハハハ、お前頭おかしいんじゃねぇの? 実の父親が顔だけで自分を選んだなんて事実を誰が知りたがるんだよ」
頭を抱えて、狂ったように笑う。
……本当に酷い話だな。
俺はずっと少しでいいから優しくして欲しいって、愛して欲しいって思っていたのに、あの親父はずっと俺の顔にしか興味がなかったなんて。
そもそも俺の親父はぶっ壊れている。
息子の彼女を殺そうとするだけならまだしも、死体の偽装までするなんて、本当に可笑しい。
そんなやつが俺を愛してくれるわけないのに、そうわかっていながら愛を求めていた俺は相当のバカだ。
俺はドアノブを回して部屋のドアを開けた。
部屋から出ようとする俺の腕を仁が掴む。
「……仁、ごめん。今朝の言葉聞かなかったことにして。……俺、もうお前らとは一緒にいられない」
俺は仁の腕を振りほどいた。
「なっ、何言ってんだよミカ」
仁が俺の肩を揺さぶって、弱々しい声で言う。
「ミカ、落ち着けよ。一旦冷静になれ」
仁の隣に結賀が来て、俺を見ながら言う。
「……ごめん」
俺は仁の手を肩からどかすと、部屋を出た。
「「ミカ!」」
結賀と仁が廊下にいる俺を見ながら叫ぶ。
「……ついてくんな。でないともう会わない」
口から出たその言葉はただの脅しだった。
俺はそのまま家を出て、行く宛てもなく歩いた。