一匹狼くん、 拾いました。弐

 仁と結賀は気を遣ってくれたのか、本当に追ってこなかった。

 家の近くにあった公園の中に入ってブランコにまたがってみると、ブランコがグラグラと揺れた。

 首にかかっていた煙草のケースを開けて、箱から煙草を一本取り出す。

 ポケットにあったライターで火をつけてそれを吹かしていたら、涙が出てきた。

「あはははは、は」

 感情がごちゃまぜで、笑いしか出てこなかった。

 仁達がいるし別にあんな真実を知ったからって死にたいとは思わないけど、何かもう自分が何をしたいのか分かんねぇや。

「あー、くそ」

 なんで親父はこんなに俺の頭から離れないんだろう。
 あんな奴に育てられたくなんてなかった。 あんな奴に育てられなければ、こんなに不幸にならずに済んだのに。

 ――逃げたい。
 この世界から。親父から。俺を裏切ったあの母親から。
 ふと、そんな考えが頭をよぎった。
 死にたいと思ってるわけでもないのに世界から逃げたいなんて、この頭は随分矛盾したことを考える。

「……いっそもう、殺してくれよ」

 こんなに悩む羽目になるくらいならいっそ、あの日殺されればよかった。
 両足を粉々に砕かれたあの日、殺されればよかった。
 そうしたらこんなに悩まないで済んだのに。

「アハハ」
 どの口が。死ぬのが怖かったくせに。
 岳斗に助けられて、すごく安心したくせに。

「はぁ」
 ため息をついて頭を抱える。
 本当にもうめちゃくちゃだな、俺の頭の中。

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